奨励賞: 柳澤 秀吉(東京大学)

学生時代に,設計工学・システム部門講演会で講演表彰を頂いたことが大きな励みとなり,これまでの研究を進めて来られたご恩に重ねて,この度,奨励賞を頂き身に余る光栄で,同時に身の引き締まる思いでもあります.
私の研究の問題意識は,「多様な感性に基づく設計要求をいかに具体化するか」です.日本特有の概念である感性は,特に,統合を扱う設計において,その重要性が高まっています.従来から,感性工学など分野でも多くの試みがありますが,これらは,主に統計的に平均化しても問題ない感性を扱っていました.しかし,感性は本来,個人によって多様であり,また多様化が進む要求に対応するためには,感性の多様性は無視できない状況であります.そこで,我々は「多様性」と「個」に着目した感性要求の具体化手法と設計支援について研究してまいりました.具体的には,意匠形状の設計問題を対象に,個人間の感性の相違を定量的に示す手法を開発し,デザイナと一般顧客間での感性語の意味の相違を明らかにしました.また,顧客個人の漠然とした意匠形状に対する要求のイメージを,計算機との対話により具体化する,対話型縮約進化計算法(IREC)を開発しました.
感性の問題は,まだまだ,やらなければならない事が山済みです.頂いた賞を励みに,より一層励んでまいりたいと思っております.最後になりましたが,いつも温かいご指導を頂いている設計工学・システム部門の方々に,改めて厚く御礼を申し上げます.

JSME home pageD&S home pageReturn